社員による”ちょっとした”お話を掲載するコーナーです。
今回は社内一の物知り博士かーむらさんのコラムです。
ついにこの時が来てしまった。誰だ、こんな企画を考えたのは。
大してネタもない時に限って、
「かーむらさん、次のコラムよろしくお願いしますね」
なーんて頼まれてしまうのだ。タイミングが悪いにも程がある。
12月はクリスマスや大晦日、1月はお正月、といったふうに、一見イベントもりだくさんで書きやすいように思われるかも知れない。 しかし、これが掲載される頃には、クリスマスはとっくに終わり、正月はまだ来ていない。なんともビミョーな時期だったりする。
そもそも独り者の僕にとって、クリスマスはさほど重要なイベントでもない。無理やり何かネタを作ることも考えたが、こういう時に限って風邪をひいて寝込んでしまうという有様だ。
サンタさん、ウイルスなんて要らんとですよ。
あー、やれやれ。本当にネタがない。
しかしながら、他の連中も一応は頑張って原稿を挙げているわけだし、最古参の社員(まだ28歳と2ヶ月足らずだが)としても、可愛い後輩の提案も無碍にはできんしなぁ。
まあ、とにかく頑張って何か書くとしよう。チューハイ呑みながらで申し訳ないけど。
先日、2005年度の流行語大賞が発表された。政治、経済、社会、芸能など、様々な分野で世の人々をにぎわせた表現やニュアンスを取り上げ、 その流布に寄与した人物を表彰するという賞ということは、今更言うまでもないだろう。
この賞で表彰されるのはトップ10の人々だが、候補語として挙げられた他の新語・流行語を観てみるのも、なかなか面白いものだ。 いま話題の『耐震偽装』は間に合わなかったようだけど。
僕個人が最も注目した新語・流行語は『ブログ』だった。
平たく言うと、ネット上で公開されている、一個人の日記帳だ。
今から6年前、大学生だった僕は『ネットワーク・ソサエティ』という卒業論文を書いた。大まかな主旨としては、
「近い将来、インターネットを始めとするネットワーク基盤が発達することにより、人々は〈情報〉に対する価値を見出し、一個人の情報発信行為がパーソナルな人間関係を通じて伝播し、不特定多数の他者に、やがては社会全体に対して大きな影響を与え、新たな文化が創出される」
という展望について、各種資料を踏まえてまとめたものだ。
論文を書き始めた当時でも、個人運営のサイトは存在していた。その多くは特定分野の掲示板やデータベース、あるいはブラウザで動作するプログラムを使った自己診断系サービス(心理テストや占い)などがほとんどだった。
ところが、僕が論文を完成させてからわずか数年の間に、ADSLやら光ファイバーやらのインフラが著しいスピードで整備され、商業・研究の分野のみならず、一般家庭にまで広く普及した。個人とネットワークとのアクセスビリティがより強固となり、コミュニティに対して発せられた情報が、現実社会においても影響力を持つようになった。
現時点において、その最たる典型こそがブログである。
筆者にとっては〈日常〉である記録が、閲覧者の共感や笑い、あるいは感動を呼び、そのことが他の人々にも伝わり、場合によっては社会的に認知される程のムーブメントにまで発展する。『ブログ』の代表として流行語大賞で表彰されたブログに至っては、書籍化やドラマ化までされたほどだ。
それは勿論、筆者の表現力や文章力が少なからず由来している。しかし、以前の社会であれば、作家やマスコミ関係者など『情報発信』を生業とする人々でなければ、あるいはそういった人々を通さなければ、個人が社会に対して何かを伝える機会はなかった。
今の時代には、その機会が充分に与えられている。
それはとても価値のあることだと、僕は思う。新しい何かと、より多くの人々と、つながることのできる可能性が、そこにあるのだから。
とはいえ、発信すべきネタもないのにそれを強いられるなんて、ある意味拷問じゃないだろうか、とも思っている。今の僕に発信できる情報なんて、この程度のものなのだ。
さて、なんだかんだ言ってる間に、年が明けてまた忙しい日々がやってくる。
もしもサンタクロースの個人運営サイトがあったら、
僕はきっと「来年こそは時間とネタを下さい」
というメッセージを送るだろう。
それでは良いお年を(なんだこのオチは)。
Dec 28, 2005
- 2006年 6月 「暗号」by さかな
- 2006年 6月 「夏の虫」by たま
- 2006年 5月 「春」by ラッキー
- 2006年 4月 「音のない世界」by ume
- 2006年 3月 「ウィンタースポーツ」by ぼる
- 2006年 2月 「記憶力」by ぼる
- 2006年 1月 「ブログ」by かーむら
- 2005年12月 「おとしもの」by たま
- 2005年11月 「今日の占い」by ラッキー
- 2005年10月 「11時の会」 by ume